東北地方を車で走らせていた私は、新潟県糸魚川市を訪れた。
長い長い階段の地下奥深く、真っ暗闇のトンネルにポツンとホームが出現する駅があるという。
日本を周遊している中で、ふらりと寄ることが出来た「筒石駅」。
一体どんな駅なのだろうか。
実際に訪問した様子をレポートしてみたい。
筒石駅へ
左手に海をみながら日本海の道路を走り、ハンドルを右へ切り山道へ向かう。
うねるカーブを走りながら、筒石駅に到着した。
駅舎の正面に車を止めた。
プレハブ小屋のような、簡素で素朴な作り駅舎。
正面左手に、駅についての情報が書かれている。
「ホームは40m下!トンネルの中の駅」
地上入り口で、駅員さんに受付をしてもらい、
電車に乗らない、見学のみのチケットを¥210で購入しいよいよ駅の中へと向かう。
290段の吸い込まれるような長い階段
切符売り場からゲートをくぐると、急に空気が変わった。
異世界の入り口のように、吸い込まれるように階段が地下へ伸びている。
装飾のない、コンクリートむき出しのワイルドな風貌。
壁には空を翔ける龍のように、配管が這っている。
サイバーパンクな雰囲気が素晴らしい。
階段を降りきった突き当たりは、鉄製の柵で塞がれていた。
空気口のような役割だろうか、隙間を覗くと更に地下へと続く暗闇の空間が続いていた。
バイオハザードのような廃墟感
階段を突き当たり、左へ通路が続いていた。
歩みを進めるたびに、足音がトンネルに反響する。
天井からは水が浸みだし、壁や床を濡らしている。
湿気の影響か、コンクリートは変色が激しい。
奥からクリーチャーが飛び出して来そうな、不気味な雰囲気。
まるでバイオハザードか、エイリアンの世界に入り込んでしまったかのよう。
ここは本当に現役の施設なのだろうか。
不気味な空気の包まれながら、通路の奥へと進む。
突き当たると、さらに下へ続く階段が現れ、これを降りる。
そして地下40mのホームへ
二つ目の階段を下ると、ベンチがあらわれた。樹脂製で割と新しい。
このベンチの奥、大きな引き戸の扉を開けると、ようやくホームに到着した。
水の流れる音、暗闇の奥からくる風の音がトンネルに反響する。
大きなトンネルの中に、幅2メートルほどのホームが突き出ている。
人の気配は無く、奥は小さな灯りはあるものの闇に包まれている。
電車がやってきた
写真を撮っていると、闇の奥から電車がやってきた。
ホームが狭いので、目の前を電車が迫力に通り抜ける。
静かなホームに電車の音がけたたましく耳に響き、風圧と共に恐怖を感じてしまう。
車内の乗客が目に入ると、なにやらホッと安心する自分がいた。
筒石駅を振り返る
長い旅を続けていた影響で、私はかなり疲れていた。
どの観光地へ行っても、以前どこかで見たような気持ちになり、何も感じることがなくなっていた。
そんな時に訪れた「筒石駅」は、私の心に感動を呼び起こした。
人が手を加えずに、天然でこんなも素晴らしいホラーテイストに仕上がっていることに。
こういった施設は、老朽化による落盤の危険などを理由に、いつ立ち入りが禁止されるかも知れない。
いまのベストなタイミングで訪れてよかった。
そして私は、日本海を横目にして、北海道へ向けて車を走らせた。
おしまい
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